保育士にとって、災害時の適切な対応は、子どもたちの安全を守るために欠かせないスキルです。地震や火災、台風、洪水など、いつどこで発生するかわからない災害に対して、事前に十分な準備をしておくことが、迅速で冷静な対応につながります。ここでは、保育士が知っておくべき災害時の対応について、ポイントを整理したマニュアルを紹介します。
- 災害時の基本対応
災害が発生した時、保育士が最優先で考えるべきことは子どもたちの安全確保です。保育施設では、子どもたちが集団で過ごしているため、冷静かつ迅速な行動が必要になります。
【具体的な対応】
• 子どもたちを安全な場所に避難させる
災害が発生した際には、まず子どもたちが危険にさらされないよう、安全な場所に避難させることが最優先です。施設内で安全な場所に移動するのか、屋外に避難するのかは、その時の状況によって判断します。建物の崩壊や火災のリスクがある場合は、速やかに屋外へ避難しますが、地震などの揺れが続いている場合は、建物の中で机の下に隠れるなどの初動対応を行います。
• 保育士同士で役割分担を行う
災害時には、事前に定められた役割分担に従って対応することが重要です。たとえば、一人は子どもたちの避難誘導を行い、別の保育士は非常用バッグや救急用品を持ち出すなど、各自が何をすべきかを明確にしておくことで、混乱を防ぎます。役割分担は定期的に見直し、全員がその内容を把握しておく必要があります。
- 災害ごとの具体的な対応
災害には、地震、火災、台風、洪水など、さまざまな種類があります。それぞれの災害に応じた具体的な対応を知っておくことが、迅速な避難行動につながります。
【地震】
• まずは身の安全を確保する
地震が発生した際には、建物が崩れるリスクがあるため、揺れが収まるまでその場で安全を確保します。机の下に隠れたり、頭を守りながら姿勢を低く保つなどして、物が落ちてきた場合に備えます。揺れが収まった後、建物の安全を確認し、必要に応じて避難を開始します。
• 避難経路を確保する
地震が発生した後は、避難経路の確保が重要です。ドアが閉まってしまうと、逃げ道がなくなる可能性があるため、すぐに開け放ち、避難路を確保します。また、避難時には落下物や倒壊物がないかを確認しながら進むようにしましょう。
【火災】
• 火元から離れる
火災が発生した場合は、まず火元から子どもたちを離し、安全な場所へ避難させます。煙は上部にたまるため、できるだけ低い姿勢で避難し、煙を吸い込まないように注意します。ハンカチやタオルで口と鼻を覆うなどの対策を取ります。
• 消火設備の使用
火災が小規模な場合は、消火器や消火栓を使用して初期消火を試みますが、火が大きくなってしまった場合には、無理に消火せず速やかに避難します。消火設備の使い方は事前に全職員が習得しておくことが大切です。
【台風・洪水】
• 施設内での待機を基本とする
台風や洪水の場合は、外部へ避難することがかえって危険な場合があります。そのため、基本的には施設内の安全な場所で待機します。窓ガラスが割れる可能性があるため、子どもたちを窓から離れた場所に避難させ、窓にはカーテンを引いておくことで、飛散物による怪我を防ぎます。
• 避難経路を確認する
洪水の可能性がある場合、避難する際には水の流れや冠水箇所に注意が必要です。特に大雨や川の氾濫が予測される場合は、事前に避難経路や避難場所を確認し、高台や安全な建物へ速やかに避難します。
- 災害時の備え
災害時に適切に対応するためには、日頃からの備えが非常に重要です。保育施設全体で、災害に備えた対策を講じておくことで、いざという時に冷静に行動できます。
【具体的な備え】
• 非常用持ち出し袋の準備
災害時にすぐに持ち出せるよう、非常用持ち出し袋を常に準備しておきます。袋の中には、子どもたちの人数分の飲料水や非常食、救急用品、毛布、懐中電灯、携帯用ラジオなどを入れておき、定期的に中身をチェックして補充や交換を行いましょう。
• 定期的な避難訓練の実施
災害時にスムーズに行動するためには、定期的な避難訓練が欠かせません。子どもたちに避難の流れを習慣づけるだけでなく、保育士同士が連携して避難するための訓練も大切です。訓練では、地震、火災、台風など異なるシナリオを設定し、さまざまな状況に対応できるようにしておきます。
• 保護者との連携を強化する
災害時に保護者と連絡を取り合うための体制を整えておくことも重要です。緊急連絡網や、保護者への引き渡し手順を明確にし、災害が発生した際にスムーズに対応できるようにします。保護者に対しても、災害時の対応について事前に説明しておくことで、信頼関係を築くことができます。
- 心理的ケアの重要性
災害時には、子どもたちの心理的な影響にも十分な注意が必要です。災害そのものの恐怖や、避難時のストレスが子どもたちの心に大きな負担をかける可能性があるため、保育士は心理的なケアも欠かさず行うことが求められます。
【具体的な対策】
• 子どもたちを安心させる
災害時、保育士が落ち着いて行動することが、子どもたちの不安を軽減する大きな要素となります。子どもたちは大人の表情や行動から状況を察するため、保育士が冷静でいることが子どもたちの安心感につながります。避難時には、優しく声をかけながら、安心感を与えましょう。
• 遊びや活動を通じたストレス緩和
災害後の避難所生活や、長時間の待機中には、子どもたちが不安やストレスを感じやすいです。そこで、できる限り遊びや活動を通じて気を紛らわせ、ストレスを軽減する工夫をします。絵を描いたり、歌を歌ったり、手遊びをするなど、子どもたちが少しでも普段通りの生活を感じられるようにすることが大切です。
まとめ
保育士が知っておくべき災害時の対応は、子どもたちの安全を最優先にした行動と事前の準備、そして災害ごとの具体的な対応策を理解し、心理的ケアも含めた包括的な支援を行うことです。日常的に訓練を行い、災害時に冷静かつ迅速に対応できるようにしておくことが、保育士としての重要な責務です。